「それこそ、東海林先輩とも、随分前だけど桜庭くん、噂になったことあった気がするよ。
 でもとわの話聞く感じだと、仲悪そうだね。桜庭くんと東海林先輩」

「うん。……桜庭くん怖かった」

「そっち? こないだの東海林先輩も怖かったけど」

「だって、なんか……普段は桜庭くんいっつも笑ってるのに、笑わないし。喋り方まで変わったし」

「とわ。そこは、萌えるとこだよ?」

「何に」

「ギャップに」

「萌えないよ。二人とも怖かったもん」

 羽純は「そうかなぁ……」と漏らして続けた。

「さっきも言ったけどさ、桜庭くんってそんな常に愛想振りまいてるわけじゃないから、とわが見てるいっつも笑ってるっての方が珍しいかもよ?」

「……そうなの?」

「そうだよ。アレが愛想振りまいてずっと笑っててみ? とっくの昔にハーレム出来てるよ」

「……」

「でも、確かにとわと話してる時の桜庭くん、いつ見ても楽しそうだね。だから余計に、うちのクラスの子達は気にしてるのかも」

 黙り込んだ私に、羽純は「ああいう子達は 気にしすぎたらダメだよ」と笑った。