「俺は、とわが好きだよ。さすがに、こんな状況にされちゃったから、すぐとは言えないけど、とわの気持ちが落ち着いたら、彼女になって欲しいとも思ってる。
 俺は、こんな状態で夏休みになって、とわの事を有耶無耶のままで終わりにもしたくない。だから待ってた。
 俺には、とわに謝る理由 ちゃんとあるんだよ」

 耳元で囁く桜庭くんの声が、優しく響く。

 必死で取り繕った鎧は、あまりにも脆くて、桜庭くんの優しい声と、言葉と、暖かい体温に、はらはらと剥がれ落ちていく。

「武田のこと、忘れさせてから言いたかったのに。もう、千紗のせいで散々だよ。しかも明日から合宿なのにさ」

 ホント、最低のタイミングだ。と桜庭くんは自嘲気味に笑った。

「電話するよ。メールもする。だから……返事頂戴?」

 私の頬を桜庭くんの両手が包み込む。

 4度目のキスは、涙で塩辛かった。

 全ての鎧を桜庭くんの手で取り払われた私に残されたのは……

『じゃあ、どうして 土曜日はあの人が最優先だったの?』

 という、薄衣だけだった。