「友香と付き合ってなんていない。千紗と同じ、家が近いただの幼馴染だよ。土曜日も、千紗が勝手に連れてきただけだし。
 前も言ったけど、俺、今は誰とも付き合ってないよ」

 それでも、あの人の方は違う。あの人は桜庭くんの事を間違いなく好きだ。そして、東海林先輩はあの人の味方で、東海林先輩の言う、“他人”はあの人の事で……

 つまり、桜庭くんは、あの人のもの。

「……それでも、……私には関係無いよ。
 そもそも、私と桜庭くんはただの友達で、付き合っているわけじゃないし。桜庭くんは、私が武田に彼女が出来ちゃって凹んでるの見て、何となく話しかけてみただけでしょ?
  大丈夫だよ。ちゃんと、判ってるから。キスも桜庭くんにとっては、大したことじゃないから…… しただけなんだし。判ってるから……心配しなくていいよ。勘違い、したりしない。
 それにさ。私は、桜庭くんの事、好きな訳でもないし……。だから……だから、桜庭くんが謝る必要なんて、どこにも…………」

 私が俯いたまま、桜庭くんに並べ立てた理由は、最後まで言葉にならなくて。最後は、尻すぼみになって、声が出なくなって終わった。