校舎に入って、自動販売機でスポーツドリンクを買う。持ってきたお茶はまだ残っていたけれど、冷たいのを飲みたくてその場で半分程を一気に飲んだ。

 試合始まる前に戻らないと若菜に心配かけるかな。

 渋々グラウンドに戻るその途中、私はとても綺麗な女の子とすれ違った。

 日差し浴びて輝くように見える白いワンピースに、日焼けなど知らないような白い肌。重めの前髪、長い真っ直ぐな黒髪。今日は蒸し暑いのに、まるで彼女の周りだけは別の空間に見えるような。そんな、女の子だった。

 こんな子、うちの学校にいたっけ……?こんなお人形さんみたいな子 1度見たら、忘れないような気がするんだけど……。

 私がグラウンドに戻った時は、ちょうど試合が始まる直前で、さっきは遠くにいた桜庭くんもベンチの近くにいた。

 桜庭くんと目が合って、こっちに手を振ってくれた直後、私の周りの女の子達が色めきだった。

「見た? 今 桜庭くん、こっちに手振ってくれなかった?!」

「見た。初めてなんだけど!!」

 そのテンションに、私は、自分の状況の厄介さを悟った。