今日は、サッカー部の練習試合だし、2人じゃないけれど、少し位は話が出来るのかな? と勝手に思っていた。

 私は冷凍庫からカップを移すのを手伝って、若菜と一緒にグラウンドに出る。

 肌をチリチリと日差しが焼いていくのを感じて、持ってきていた薄手のパーカーを羽織ったものの、蒸し暑さは半端ない。何も無かったら絶対外になんて出てこない。そう思うような天気だ。

 サッカー部を見に行くと、ちらほらと応援に来ている女子の姿も目につく。

 そんな中、遠くに居るのに真っ先に目に入る長身の姿。桜庭くんだ。まだ試合まで少し時間があるからか、ボールで戯れている姿は、なんだか遊んでいる大型犬みたいに見えた。

「あ、武田くん いたよ」

 若菜が手を振ると、武田がこっちに歩いてくる。

「若菜。瀬川も来てたんだ」

「うん、若菜ひとりじゃ嫌だって言うんだもん。頑張ってね」

 繕った笑顔で言いながらも、心の中では、武田の言葉に打ちひしがれる。『瀬川も』……か。あぁ、私……完全におまけ扱いだ。

「若菜、私 飲み物買いに行ってくるね。飲み切っちゃったの忘れてた」

 いたたまれなくなって、私はその場を逃げ出した。