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 放課後、部活へ行くと珍しく羽純の姿があった。

「あ、とわ来た。大丈夫?」

「……わかんない」

 私と話したら帰るつもりだったという羽純と、私は書道室を出た。

「……ふぅん。本人に彼女居ないって言われたんだ」

「うん」

「本人が言っても信じられない?」

「……だって、昨日のあの剣幕だよ?」

 私には、桜庭くんが嘘を言っている様には聞こえなかった。だけど、昨日来た東海林先輩の剣幕を思い出すと、憂鬱になる。羽純も昨日を思い出したのか「確かにねー」と苦笑いを零した。

「本人に相談すれば? 3年生に言われたって」

「……えー……」

「だって、悩んでるってことは、とわ 桜庭くんと縁切りたくないんでしょ?」

 言われてはたと気づいた。確かに。悩むということはそういう事だ。

 初対面は最悪だったし、ノートは返してくれないし、今だってこんな面倒なことになっている。

 だけど……、と私は歯噛みした。