スイート ジャッジメント【番外編、別視点公開しました】

「あなたのために言ってるのよ? 他人の男に手を出すのはやめなさい。いいわね?」

 “他人”の男……? そんなの、知らない。桜庭くん、彼女……居るの? 彼女いるのに、私に構ってるの?

 ……私が答えずに居ると、バンッと机を叩いた。そのあまりの勢いに、私の筆が転かって床に落ちた。

「返事は?」

「……わかりました」

 私の答えると、わかればいいのよとでも言うように、フンっと顔を背けるとそのまま帰って行った。

 普段は平和そのものの書道部だけに、あの人が出て行ったあとも、シーンと静まり返ったままみんな動かない。

 そんな空気の中、私は床に落ちた筆を拾って、汚れた床をティッシュで拭う。

「……瀬川さん、大丈夫?」

 最初に口を開いたのは、遠野先輩だった。

「大丈夫、です」

「今の、うちの学年の東海林 千紗って言うんだけど…… あんな感じで派手なんだよね。あの言い方だと、今 桜庭くんと付き合ってるのかな……」

 桜庭くんと、今の人が付き合ってる……の?

 じゃあ、桜庭くん、あの人ともキス、してるの?

 湧き上がって来る嫌悪感に、唇を噛んだ。

「大丈夫です。お騒がせしてすみません。今日はもう帰ります」