「とーわ」

 私の1段下に立っている湊の頭は私より少し上。

 私の左の頬を湊は右手で撫でて、その手は私の顎を掬う。もう一度、今度はゆっくりと重ねられる唇。

 それは、とても甘い。

 湊とのキスは甘くて心地良くて、私は湊のことしか考えられなくなってしまう。甘いキスの余韻に浸りながら眼を開ければ、いつもの様に間近で湊が笑う。そして、私に手を差し出した。

「行こ? とわ」

 ……この手、ホントに取ってもいいのかな? この手とったら、このままビキニ買いに連れてかれるんだよ?

 一瞬浮かんだ疑問は、まぁ、そこは……お店で攻防したっていいかと流すことにして、湊の手に手を重ねた。湊に勝てる気はしないけれど。

 するりと滑らかに私と湊の指は絡まって、掌がぺたんと触れ合う。あまりにも滑らかに当たり前のように繋がるそれに、小さく笑みが零れた。

「何笑ってんの?」

「……まぁいいかなって」

「ビキニ?」

「そこじゃないよ。それは恥ずかしいから、出来ればやめて欲しいよ」

 甘いキスに誤魔化されて流されたんじゃない。

 心地良さが欲しくて中途半端な考えで甘えたんじゃない。

 これは、私が選んだもの。

 私が今の私に出来る限り考えて考えて決めて、これから先ずっと続いて欲しいと願ってやまない湊との、甘くて心地良い……未来。



 -sweet judgment-