「マネ希望で20人位いて、疲れたよ。結局ね、うちの学年から選ばれたの茅ヶ崎さん。わかる? あそこに居る背高い、ポニーテールの」

「C組の? やっぱ顔なのかぁ……」

「でもなくて。茅ヶ崎さん、中学でもマネージャーしてたのかなぁ。練習メニューの事とか、用具の名前とかほとんど知ってるの。もう、うちらみたいな初心者全然出番なしっていうか……。2、3年生の満場一致だってさ」

「羨ましーい。イケメンいっぱい居るじゃん」

「でもね、3年生引退したら、70人くらい部員いるのにマネ2人でそーとーキツイらしいから、駄目でよかったかなぁって。イケメンは、廊下でも見れるしね」

 それを聞きながら、サッカー部は大変だ、と人事のように思っていた。

 野球部にハンドボール部、外で活動している運動部の練習風景をぼんやりと眺めているうちに、彼らはもう一周回ってきた。

 来た。

 私がじっと、その人を見ていると、その人は私の前で速度を少し落とした。

「瀬川、帰んの?」

「うん。部活頑張ってね」

 それだけ。……たったそれだけの言葉に満足して私は歩き出す。

 後ろから、「やばい。桜庭くんマジカッコいい!!」と、黄色い声が聞こえてきた。