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大人しい部員が多い書道部にしては珍しく、勢いよく書道室のドアが開いた。
「とわ いぅひょあぁ」
響いた羽純の奇声に、全員の視線が入り口に集まる。
「……はずみん」
お昼休みに「今日部活行く? 」とメッセージが来ていたけれど、こんな勢いでどうしたんだろう?
「す……すみません……。まさか、桜庭本人いると思ってなかったから、変な声出た……」
羽純は腰を低く謝りながら、苦笑いして私のところまで歩いてきた。
そう。部活を土曜日で早々に引退したから暇だと言って、湊が書道室に居る。「大人しく勉強してるからいいじゃん」とは本人の弁。
その湊と羽純の間の空気が妙だ。お互いに、顔色を伺っているような、牽制し合っているような、そんな妙な空気。
去年、体育が一緒だとは言っていたけれど、羽純は湊と特に接点を持ってはいないような雰囲気だったのに。
先に口を開いたのは、湊だ。

