何度も私の名前を呼ぶ湊の声と一緒に、優しいキスが雨のように降り注ぐ。

 唇にも、頬にも。触れる唇に応えるように額を寄せて、鼻先を触れあわせて、戯れるようにキスを繰り返すうちに、お互いに立っていられなくなって、壁に寄りかかって座った湊の胸に身体を預けた。

「ねぇ、とわ。もう痛いとこ無い?」

「?」

 涙の滲んだ目で私を見つめて、湊は私の髪の中に手を差し込んで私の頭を優しく撫でる。

「どこも痛くないよ? どうして?」

 大きな手に頭を抱き寄せられて、私の顔は湊の胸に埋まって、身体ごと全部抱き締めるように、長い脚まで私の身体に絡まってくる。

「だって俺、とわが友香に階段から落とされてからずっと会ってなかった……。
とわ……動かないし、目も開けないし……。周りに誰も居ないし……。あの時、本気でどうしていいか……わかんなかっ……た」

 言葉に詰まった湊は、私をさらに強く抱きしめる。その震えた声に、私まで泣きたくなって。「ごめんね」と繰り返す湊の腕の中をもぞもぞと抜け出した私は、ぎゅうっと湊の頭を胸に抱き締めた。

「もう大丈夫だよ、もうどこも痛くないよ。全部、大丈夫。ごめんね、湊」