スイート ジャッジメント【番外編、別視点公開しました】


 待ち時間をどう過ごすか悩んで、結局自販機でジュースを買って書道室の扉を開けた。

「あれ? 先輩」

 ちょうど道具を片付けていた佐賀さんが振り返った。

「忘れ物ですか?」

「ううん。ちょっと人を待ってるから時間つぶしに来たの」

 何をしようかな、と自分の道具に視線を向ける。

 書くのは……さっき、書いたばかりだし。

 大体知っている本だけど、何か面白い本は増えて無いかな? と国語科資料の棚を眺めて、まだ読んだことがなかった受験対策の参考書を手に取った。

 佐賀さんを見送ると、久しぶりに一人きりの書道室はすごく静かに感じられた。

 最近は、羽純が来る日に合わせて週に1度位しか来てなかったし、来ても羽純と一緒に帰っていたから、桜庭くんを待っていた頃みたいに最後まで残る事も無かった。

 受験対策の参考書は見てみたもののつまらなかったので、パラパラと万葉集の対訳をめくって、何度も書いたあの和歌のページで手を止めた。

 文化祭前に意味を桜庭くんに聞かれて、教えたら「完全に武田の事じゃん」って拗ねてたっけ。そんな事を思い出してふふっと笑いが零れた。