あんな噂が沢山あっただけあって、私に向けられる視線は好奇の色を帯びている。私は足がすくみそうになった。そんな中、すれい違いざまに微かに口元に笑みを浮かべた武田が私の背中を力強く押してくれた。
そして私は、桜庭くんの前で……足を止めた。
久しぶりにちゃんも向き合った桜庭くんは、やっぱり背が高くて、サッカーをしてたら凄くかっこいい。元々細身だったけれど、すこし痩せたかもしれない。
「……とわ。……来てたの」
「うん。最後の試合、お疲れ様」
差し出したドリンクボトルを大きな手が受け取った。
半年ぶりに桜庭くんと交わした言葉は、大した意味もない言葉なのに、じんわりと熱を持って心に染み込んでいく。少し緊張した声音だけど、久しぶりに聴いた私の大好きな人の声だ。
「見てたよ。シュート決めたところ」
「マジで? そんな前からいたの?」
全然気付いてなかった、と桜庭くんは苦笑した。私を見つめてくれる桜庭くんの眼差しはどこか悲しそうな気がした。
「会いたかったよ」
そう告げると、桜庭くんの瞳が揺れた。

