まだ春なのに夏の様な日差しの中、私はグラウンドに出る。風だけは春の気配を残していて、頬を撫でる爽やかな風が、背中を押してくれるような気がした。
向かう先では、サッカーのゲーム中。茅ヶ崎さんに教えて貰った3年生の引退試合だ。
いつもよりは近く。だけど、他に見に来ている女の子達よりは少し離れたところからその試合を眺める。
前はルールもさっぱり分からなかったけれど、桜庭くんに教えて貰って、今では試合の流れを追えるようになった。3年生のサッカー部員の顔と名前も……桜庭くんがたくさん話してくれたから殆ど覚えている。
右側のゴールを守っているのは3年生の橋浦くん。左側は2年生の子だったはず。攻め込まれていた3年生だけど、武田がボールを奪うや否や、一気に攻め上げてゴール近くにいた吉沢くんがシュートを打って、キーパーが弾いたそのボールを、桜庭くんがゴールポストにねじ込んだ。
わっと熱を帯びた空気が離れていても伝わってくるけれど、私は少し冷めた気持ちでそれを見ていた。
今日で最後かもしれない。桜庭くんと、今日これから……本当にさようならするのかもしれない。

