それでも、サッカー部の引退がいつなのか気になって、茅ヶ崎さんの言葉に耳をそばだててしまった。

 朝に武田に聞けばいいのかもしれないけれど、武田は気を使って私に部活の事や桜庭くんの事を一切話さないでいてくれるから……なんだか聞きにくかった。

「来週までかな。なんで?」

「とわ が文化祭まで部活するっていうから、サッカー部はいつまでかなーって思って」

 私を見て、茅ヶ崎さんは微かに目を細めた。私は、居心地が悪い気がしてやっぱり目を逸らしてしまう。なんで美久ちゃんは、急にサッカー部の事に触れたんだろう。

「文化祭までなんだ、文化部は引退遅いんだね」

 私は、俯いたまま小さく頷くしか出来なかった。

「ねぇ、瀬川さん。試合、見に来こない?」

「え……?」

「今週は北高に行くから難しいかな。だから、来週。グラウンドで午前中、紅白戦やる予定」

 ひたとまっすぐに茅ヶ崎さんに見つめられて、私は言葉が返せなかった。何故私に来たらなんて言うのか、その理由が判らなくて。

「瀬川さん来てくれたら、すごく喜ぶと思うけど。あいつ」

 はっきりと“誰が”とは言わないその言葉に、息を呑んだ。