新しいクラスには、若菜も、武田も、もちろん桜庭くんも居なかった。友達がそんなに多くない私にとっては、少し辛い知り合いの少ないクラスで、唯一の救いは担任が瀧先生だった事。

 あの文化祭の一件で広まった変な噂は先生方の耳にも入っていてもおかしくない。あえて事情を全部知っている瀧先生が私の担任になったのかも。瀧先生は、進路相談の時には、進路だけでなく、友人関係至るまで、たくさんたくさん気にかけてくれていた。

「運動部ってもう引退なの?」

 私は、美久ちゃんに思わず聞き返していた。美久ちゃんは、新しいクラスで出来た唯一の友達らしい友達で、バスケ部だ。

「そうだよ。うちの学校は運動部はだいたい今時期で引退かな。もっと遅くてもいい気もするけど、辞め時わかんなくなるってのも判るし、受験だからって思ってる子もやっぱり居るしね。スポーツ推薦の人は別だけど。そういえば、文化部っていつ引退するの?」

「んー、書道部は文化祭までかな。引退しても、時々来る先輩多かったけど」

 運動部はもう引退、しちゃうんだ。帰る時にサッカー部を見ても、もう、桜庭くんは居なくなっちゃうんだ……。