「女の子同士の話するんだから、邪魔しないでよね? ドアも閉めてよ」

「それは無理。話も聞こえるとこには居るよ」

 桜庭くんは苛立った様子で、腕組みしてドアフレームに寄りかかる。

 私は、そんな桜庭くんに「大丈夫だよ、多分」と声をかけた。言っておきながら……、友香さんの纏う異様な空気は不安だけど。

「自己紹介、今更要らないよね。聞いてるんでしょ? 私の事。 私も、知ってるし。とわちゃんのコト」

 桜庭くんは友香さんに私の事は話していないと言っていたし、さっきの反応を見ても、やっぱり桜庭くんが話した訳では無さそうだった。それなのに、どうして知っているの?

 東海林先輩か、それとも他の誰かか。何れにしろ、好意的に伝えられていることは無さそうだ。

「私ね、満のことずっとずっとずぅっと前から大好きなの。とわちゃんは?」

「私は……、私は、満さんの事は知りません。桜庭くんの事は……」

 口にしようとして、まだ桜庭くんに1度もちゃんと「好き」と言っていないことを思い出した。折角なら、本人に一番最初に言いたかったな。

 だけど、今、後には引けない。