友香さんにショックを与える様なことはしない、その点では桜庭くんは東海林先輩を信頼しているような口ぶりだった。

「とりあえず、廊下《ここ》だと落ち着かないし書道室行かない? ちょっと考えたい。それに、俺が友香と一対一で話すのは多分避けた方がいいから、友香の親にも連絡しなきゃ。千紗が連絡したって言ってたから、来るはずだし。とにかく、友香のことは大丈夫だよ。とわのこと職員室まで送ってから、何とかする」

 こんな状況なのにのんびりしてる、なんて思っていた桜庭くんの表情は真剣で、いつもの優しい笑顔は消えていた。

 そして廊下の突き当たりの書道室のドアを開けた桜庭くんが急に立ち止まったので、色々と考え込んでしまっていた私は、思いっきり桜庭くんの背中に突っ込んだ。

「ご、ごめん。……桜庭くん? 急にどうしたの?」

 強かにぶつけたおでこを抑えながら顔を上げた私は、そこでようやく、書道室に先客がいたことに気がついた。