「は? 来てるの?……勝手にって……。どこにいるとかわかってんの? ……そんなの全然話にならないじゃん。……ちょっと待って。外出禁止って何の話? 俺そんなの聞いてないよ。 親に連絡した? ……うん。じゃあそのうち来るんだね?……うん。わかった。もし見かけたら、確保しとく」

 電話を切った桜庭くんは、真剣な面持ちでスマホを確認しながら、その表情を歪める。

「千紗。友香が来てるって……。うわ、やべー。すげー鬼電きてんじゃん……」

 ため息をついた桜庭くんは、「友香の着信、サイレントにしてんだよ」と苦笑して、顎に手を添えたまま考え込むようにスマホの画面を見つめた。

「……友香、かも」

「桜庭くん?」

「俺、夏休み明け辺りからばあちゃんち居るって前も言ったじゃん? 親にしばらくばあちゃん家行ってろって言われたからなんだよね。俺、聞いてなかったんだけど、今 千紗が友香が外出禁止だとか、なんか言ってたんだ。
 俺、友香にはとわの事は一切話してない。さすがに千紗だってとわの事は話してないと思うんだよね。とわの事……知ってるはずないと思ってたんだけど……。知ってるのかもしれない」