「大丈夫?」

「大丈夫」

 桜庭くんの大丈夫は……ちゃんと信じようと思っているから、それ以上は聞かなかった。

「ねぇ、帰り……どうしたらいい?」

「ん?」

「朝は、その。送ってくれるって、言ってたから」

 その後、そのまま帰るとも。

「あぁ、覚えてた? でも、いいよ。瀧が車で送ってくれんでしょ?」

「そうみたいだけど……」

 瀧先生が嫌とかじゃないんだけど、やっぱり桜庭くんの安心感とは違う。桜庭くんと一緒にいたいし、学校に居たらきっとさっきみたいに女の子にたくさん声掛けられるのだと思うと、一緒に帰って、そのまま学校には戻ってきて欲しくない気もして複雑だった。

「なんでそこで とわが拗ねるの」

 桜庭くんはくすくす笑う。

「明日と明後日、デートしよ?」

「……うん」

 書道室への道すがら、何度か鳴るスマホを無視していた桜庭くんは、諦めたように電話に出た。

「ごめん。ちょっと出るね。…………なに?」

 突き放すような声音から、クラスの人とか、部活の人じゃないのだと知れる。