「とわ。終わった?」
机に座っていた桜庭くんに、おいでおいでと手招きされて、近付いたら、ぎゅうっと抱きしめてくれた。
「電話で元気なかったから心配だったよ」
私が桜庭くんの肩に頭を乗せると、大きな手が私の頭をなでなでと撫でて、私の返事を待たずに桜庭くんは「まぁ、元気なわけないよね」と困ったように笑う。
「職員室、戻る?」
「……うん」
頷いたけれど私はなんだか動けなくて、桜庭くんの肩に預けた頭を上げられなかった。そんな私を桜庭くんは、何も言わずに抱き締めていてくれた。
どうしよう。昨日から、桜庭くんの腕の中にいるのが、安心して、心地よくて堪らない。
私、この人の事が好きなんだ。
顔を埋めた桜庭くんの首筋のから直に伝わってくる温もりと、安心する桜庭くんの匂いと、身体だけじゃなく心まで支えるように抱きしめてくれる腕を心地よく感じながら、改めてそれを実感した。

