桜庭くんと一緒に、関係者以外立ち入り禁止のプレートが立っている先の東校舎へと足を運ぶ。

 文化祭で解放されるのは、北校舎と南校舎と体育館。特殊教室が多い東校舎はそもそも解放されていない。だから、今日は本当に誰もいないはずだし、ほとんどの教室が施錠されているはずだ。

 書道室の棚に置いてあるファイルを取り出して、大量にあるストックを机に広げてみる。

「すげー。何この量」

「だって、毎日桜庭くんのこと待ってたから、一人の時間長かったんだもん」

 若菜と帰っていた頃は5時半過ぎ位に帰ることが多かったけれど、最近は桜庭くんが終わるまでずっと待っていたから、1時間近くも1人でここにいることが多かったのだ。気を抜くと変なことを考えてしまうから、ただひたすら書いていたりもした。

「……えーと、ごめんね? いつも待たせてて」

「だって、待ってないと……会えないし」

 言いながら、頬が熱くなる。私だって会いたいから、毎日待ってるんだよ? と恥ずかしくて言葉にはできなくて。そのまま、何度も書いたあの和歌が書かれた1枚を手に取る。

 たくさん書いてあるけど、あの動画と同じ物は多分使わない方がいい。

 結局、無機質な臨書を適当に手に取って、何となく気に入ったものを使うことにした。