「瀬川、休むんじゃなかった?」

「うん、その予定だったんだけど、書道部の展示の作り直しだけでも来たら?って言われたから、それだけやって帰ろうかなって……思って」

「そっか。瀬川 思ってたより元気そうでよかった。で、お前は? 今日どうする気? 」

「俺、昨日たっぷりパンダしたでしょ……」

 桜庭くんは、そう苦笑いした。 パンダって、あ……客寄せパンダ? 桜庭くん、確かに女の子たくさん呼べそう。

「とわ1人に出来ないから部にもクラスにも行かない。帰りもとわ送ったらそのまま帰る」

「お前、今日こそ他校の女子釣るの期待されてそうなのになぁ?」

 にやりと笑って言う武田に「マジで勘弁して」と桜庭くんはため息をついた。

「俺、昨日で1年分の営業スマイル使い切ったから」

 電車の中、私を挟んで頭の上で展開される会話を聞きながら、桜庭くんと武田がこんな風に話しているの初めて見たことに気づく。桜庭くんと武田は少しだけ仲が悪そうな時期もあったから、ちょっと嬉しい。

 武田と会っても、電車に乗っても、私の手は桜庭くんの手にしっかりと指を絡めて繋がれたままだった。