『着いたよ』

 駅に着いた時も連絡を貰っていたけれど、思ってたよりも早かった桜庭くんからのメッセージに、慌ててリュックを掴んで玄関へと向かう。

「本当に送っていかなくていいの? お友達も一緒に乗せてあげるけど?」

「大丈夫だよ。色々、話したいし」

 学校に行くと言ったら母にとても心配されて、友達と行くから、と言っても今尚心配そうにしている。

 その友達が……男の子、だなんて言えない。しかも、すぐそこまで迎えに来てくれてるなんて。

 エレベーターが1階に着くのが待ち遠しくて、開いたドアとエントランスホールの向こうに見えた、桜庭くんの姿に頬が緩む。

 こんな状況なのに、朝のお迎えが嬉しいなんて、私は……ちょっと能天気すぎるのかもしれない。でも、沈んで動けないより良いから、悪いことじゃないはず。

「おはよう」

「おはよ」

 駅までは、昨日の事に触れずに手を繋いで歩いた。

「なんで桜庭いんの?」

「とわのお迎え」

 駅のホームで、桜庭くんに半眼になった武田に、余裕の笑みで桜庭くんが返す。