私は今でも、若菜と付き合っちゃうなら、私も告ってみたらよかったのかなとか、せめて若菜に自分も武田のことが好きだって言っておけたら良かったのにな、とか。色々考えてしまうのだ。

 若菜と一緒に帰るの、やめようかな……。

 時々しか一緒にならないとはいえ、武田と一緒になった時、毎回あんなになってしまうんじゃ私がいたたまれない。

 ちょっとしょんぼりしながら教室に足を向ける。

 廊下や教室の窓は、ところどころ開いているらしく、風が廊下を吹き抜けていく。吹奏楽部の練習の音も、風と一緒に校舎に響いていた。

 私は、自分の教室の前で足を止めた。正しくは、足が止まってしまった。

 吹き込んできた風をはらんで若菜の髪と少しだけオレンジ色に染まったカーテンが舞う。何か話していたのか隣にいた武田が、若菜の肩に手を添えて屈んだのが分かる。

 廊下を吹き抜けた風は私の髪を揺らして頬を撫でたけれど、その風の温度を感じなかった。

 私は、咄嗟に踵を返して元来た廊下を戻って、階段の踊り場まで急いで逃げた。

 今……教室に、若菜と武田……居たよね?

 それで……、若菜の肩に、武田の手が添えてあって、二人の顔の高さもだいたい同じになって…… その先を見る前に逃げた。

 さっきの、キス しようとしてたん、だよね?

 あぁ、どうしよう。

 ため息が漏れた。