「そう、まだ見てないのね。ごめんね、瀬川さん。朝来た時にはこうなってたの」
遠野先輩に促されて視線は自然と展示へと流れる。
何気なく昨日自分の作品を置いた場所に視線を向けた私は、心臓に釘を刺されたような、そんな衝撃を受けた。
「……え……、何、ですか……これ?」
目の前にそれがあるにも関わらず、何が起きているのか、そこにある物の意味がわからない。
だって私は、昨日ここに自分の書いたものを置いたのに。
それなのに、そこにある私の書は、台紙諸共に何か硬いもので何度も引き裂かれ、突き刺され、見るも無残な有様になっていた。
さっきまではよく意味がわからなかった周りの声が、やたらと大きく響いてくる。みんなが誰の話をしているのか、聞きたくないのと、聞きたいのと入り交じって、頭の中を言葉の洪水がぐるぐると巡る。
「……動画って……なんですか?」
「SNSにあがってたんで……」
「お前、黙れよ」
答えかけた館山くんを、低い声で桜庭くんが制した。その声は、今まで聞いたことがない程に、怒りを宿していた。
「とわ、もう見たね? いくよ」
行くって、どこに? 桜庭くんは、これの事知ってたの?

