「…ひとりじめしろよ」


「…え?」


「俺は昔から、夏海のもんだから」



ふ、と肩口で夏海が笑う気配がした。



「…なにそれ」



それから耳元で囁くような声がする。



「わたしも…お兄ちゃんのもの、だよ」



「っ!!!」




や、やばい…俺の理性を遂に完全崩壊させる気かコイツは!?



ゴクリと唾を飲み込んで、なんとか衝動をやり過ごした俺は、はぁ、と深い息を吐き出した。



「? お兄ちゃん?」


「お兄ちゃんじゃねー。翼、だろ?」




昔から、何度も何度も思い描いた。


お兄ちゃんじゃなくて。

幼なじみでもなくて。



「ほら、呼んでみ?夏海」


「………つ」


「つ?」


「………翼…ん、」




“千葉翼”


1人の男として、夏海に見られたいって。




自分の名前ひとつで、タガを外されるとは思わなかった。

ついに我慢がきかなくなった俺は、衝動のまま、夏海にキスをする。



あの日とは全然違うキス。


一方的じゃなくて、気持ちのあるキス。




「夏海…大好きだ!」





end☆