夏は短し、恋せよ乙女。

“六番線に列車が参ります、黄色い線の内側でお待ちください。”

いつもとなにも変わらない、夕方。
周りはザワザワと忙しそうに動いている。
そんな中に、夏目梨々花はしゃがみ込んだ。

ズキッ

「痛い…頭が割れそう。」
頭の中を雷が落ちるような頭痛が走り動くことすらできない。
(誰でもいいから…誰かに連絡…)

鞄の中を必死に探るがこういう時に限って携帯電話が見つからない。


「おい、女。どこか悪いのか?」
上から声が降ってきて、思わず上を向く。
そこには、同じ高校の男子生徒が立っており、こちらの様子を伺っている。

「鞄を持ってやるから、近くのベンチまでとりあえず行くぞ。」

「ちょ…、触らないでよ、無礼者!」

「弱ってるときにつべこべ言うなよ。めんどくせなぁ。」

グイッ
腕をひかれ、近くにあるベンチへと移動する男女。

それが彼との出会いであった。