そうして、家に帰ってきた。
「ただいまー」
と、俺。兄さんとは、一緒に帰ってこない。何せ、自主練をするとかなんとか...。
「おかえりー、楓馬は?」
と、顔を出してきたのは姉さん。
「自主練だってさ、母さんは?」
「残業だから遅くなるって、電話あったから、今日はねーちゃん特別料理よっ!!」
...うわ、姉、咲菜は料理がとてつもなく下手。
「いや、俺も手伝うよ(汗)」
「そう?疲れてるんじゃないの?」
「ま、いーから。」

そんなこんなしてるうちに、兄が帰ってきた。
「ただいま」
「おかえり!兄さん!」
「お前、練習しなくて大丈夫なのか?」
...え?今までそんなこと言ってこなかったのに…。
最近の兄さんは、何だかおかしい。

おかしいと言っても、変におかしい訳じゃなくて、前まで言わなかったことをいきなり言い出すからおかしいって事で。

「なんで、俺を出すの?先輩5人いるじゃん」
「それがさ、飯野のやつ、盲腸だかなんかで、入院が被ってるんだってさ。あいつもついてないよなぁ。」
「そんなっ、でも、俺、飯野先輩よりも下手だよ?」
「俺はお前を出してあげたいと思ってるんだ、だから、練習したい時はいつでも言えよ」
と、肩をトントンすると、自分の部屋へ行ってしまった。
「あいつも部長なりに頑張ってんじゃないの」
「...そうかな?」
「そーよ、だから楓馬の期待に答えてあげられるのは、葵威だけよ?」
そうか...。少しでも期待を、俺に期待をしてくれているのか。だったら、俺は、どうする?


そんなの、答えはひとつしかねぇ。