「風杏ちゃん、お仕事がんばってね。そろそろ行かなきゃ……」
音ちゃんは私にくれたもの以外にも、ビニール袋を腕にさげていた。
「これから茉雛ちゃんのところに行くの。赤西さんと一緒に」
「あ、そうなんだ」
「うん。発表会も、クラスの当番も終わったし、午後は抜けてもいいよね? ちゃんと片付けの時間には学校に戻ってくるから」
「大丈夫だよ」
「午後のイベント、茉雛ちゃんと一緒に見ようと思って。風杏ちゃんがイベントの生配信を考えてくれたおかげで、茉雛ちゃんと一緒に楽しむことできるし」
文化祭に来られなくてもイベントの様子が見られるように、生配信の許可をもらった。
私の提案を快く受け入れてくれたムーンライトの事務所の社長さんに感謝しかない。
いまも白石さんは、病院でリハビリをしている。
徐々に回復してきて会話もできるようになり、いまはひとりで歩くことをがんばっていると聞いた。
白石さんの両親にはイベントの生配信のことを伝えておいたけど、音ちゃんと赤西さんが白石さんのところに行くと聞いて、うれしい。
ムーンライトのライブ、楽しんでほしい。
「それで……アーティストのスペシャルライブって、誰なの?」
「ふふっ、まだ秘密」
「わかった。イベントがはじまるまで楽しみにしてるね。あ、赤西さん来た。行くね」
「いってらっしゃーい!!」
赤西さんと音ちゃんに向かって、私は大きく手を振った。