「その……私が海に行きたいと思ったのはですね……なんとなく……なんとなくです」 クラスの女子から聞いた話がうらやましかったなんて、本当の理由は言えない。 「理由は“なんとなく”だったのか。夏だったら泳げたけど、秋の海も静かで気持ちいいな」 「うん」 横になっていた伊原くんは、起き上がって、私の隣に座り直す。 「風杏、これ……」 そう言って彼は、ジャケットのポケットから何かを取りだした。