「白石さんとは同じクラスになったことがなくて、彼女のことはよく知らないの。あの事故があったのも、私が下校したあとのことだったし……」
「そっか……」
私は当時、2年3組だった。
白石さんとは、1年も2年のときも違うクラスで、一度も話したことがない。
うちの高校は1学年3クラスしかないため、ほかの学年はともかく、同じ学年の生徒の顔や名前くらいはわかる。
話したことがなくても、私の顔と名前くらいは白石さんも知っているだろう。
ただ私と違って、白石さんは校内1の美少女だと生徒のあいだで有名だった。
同じ学年で白石さんのことを知らない人はもちろんいないと思うし、
当時の3年生や1年生も、ほとんどの生徒が白石さんのことを知っていたと思う。
それほど白石さんは、美しく目立つ存在だった。


![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)
