この声……!!


私は紙を顔から離した。


「い、伊原くん!!」


うれしすぎて思わず大きな声を出してしまう。


私はすぐに、手で口を押さえた。


「なになに……? 文化祭のイベント企画書……?」


机のそばに立っている伊原くんは、私から紙を取り上げた。


「いい案が浮かばなくて……」


「ふーん」


「……って、私たち教室で普通に話してるけど、いいの?」


私は小声で話す。


「たしかに数人しか教室にいないけど、伊原くんと私が仲良く話してるのはヘンに思われるんじゃ……」


視線を感じてチラッとクラスメイトを見ると、やっぱり少し驚いている様子。


転校してきてからクラスメイトとほとんど話さない彼が、急に朝から女子と普通に話してるのを見たらそりゃ驚くよね。


「べつに、もういいかなって」


と、彼は私の耳もとで言った。


「え? あ……そっか」


もう事故のことを調べているわけじゃないから、こそこそする必要もないってこと?


事故のことを調べるときは目立ちたくないからとカツラとメガネで変装して、地味なキャラを演じてきたわけだけど、もう彼がイケメンであることを隠す必要もなくなったんだ。


「変装も、そのうちやめるの?」


私は小さな声で質問する。


「いや、これはやめない」


「そうだよね。急に変装やめたら、みんな驚くだろうし」


「ふっ……最初うちに来た日を思いだすな」


だって、とても同一人物だとは思えなかったんだもん。