「えっ!?」


驚いた私たちは、一斉に立ち上がる。


「いま、母さんが先生と茉雛の病室で話してる」


「音ちゃんっ」


風杏ちゃんは、私にぎゅっと抱きついてきた。


「よかった……本当によかった……」


涙が止まらなかった。


「先に病室行ってる」


抱き合っていた私たちを見て、伊原くんは言った。


帽子で顔を隠すようにして、彼も泣いているようだった。


茉雛ちゃんのお父さんは、涙をぬぐう伊原くんの肩を抱きながら歩いていく。


「音ちゃん……私たちも白石さんに会いに行こう?」


「うん」


茉雛ちゃん……ありがとう。


目を覚ましてくれて、ありがとう。


あの日から、死にたいと思う日がなかったわけじゃない。


だけどね、茉雛ちゃん……。


幸せな未来なんてない、そんなことなかった。


今日は、涙がとまらないほど、うれしい日になったよ。


茉雛ちゃんが目を覚ましてくれた。


私……今日は本当に、心から思えたんだ。


生きていて、よかったよ。





     (灰谷音side*end)