そのときだった。


私たちのところに、中年の男性が息を切らして走ってきた。


「理埜くんたち、ここにいたのかっ」


たしかこの男性は、茉雛ちゃんのお父さんだ。


病院に花かごを届けに来たときに、茉雛ちゃんの両親のことはこっそり遠くから見て知っていた。


死にたかった自分を救ってくれた人たちだと、茉雛ちゃんが言っていた。


茉雛ちゃんを大切に愛していることは、遠くから見ているだけでもわかった。


茉雛ちゃんの両親を見かけるたび、私は心の中で謝っていた。


「おじさん、どうしたんですか?」


伊原くんが茉雛ちゃんのお父さんにたずねると、茉雛ちゃんのお父さんは声を震わせて言った。


「茉雛がっ……茉雛が目を覚ましたんだっ」