彼女は柵をこえて、少しずつ私のほうに近づいてくる。 彼女が一歩進むたびに、つもっていた雪がふちから落ちていく。 『音ちゃん、何かおいしいものでも食べに行こう?』 『急に何……』 『クリスマスイブだし、ケーキはどう?』 彼女は涙を流しながら、笑顔を見せる。 『音ちゃんの好きな食べ物は?』 『茉雛ちゃん……』 『何も食べたくないだろうけど、ちょっとでもいいの。おいしいもの食べるって、生きていくエネルギーだよ』