クラスメイトの告白。



『茉雛ちゃん……』


『1年生のとき、音ちゃんに話したの覚えてる? 私に双子の弟がいること』


『うん……覚えてる』


名前はたしか、“りの”くんだった。


『幼いころに両親を事故で亡くして、そのときに双子の弟とも生き別れて、ひとりぼっちになった』


『え……?』


『ひとりぼっちになって施設に引きとられたけど、施設でも学校でもいじめにあってた……。苦しくて、寂しくて、私も死にたいって何度も思ったよ』


茉雛ちゃんに、いじめられた経験があったなんて知らなかった。


『あのころ、死にたい自分、死ぬのが怖い自分、生きたい自分、毎日いろんな自分と戦ってた。心の中に1本の細い糸があって、それが切れたらもう死んでしまうような気がしてた。そんな日々だった』


いまの私と同じだ。


ずっとそのつらい気持ちを繰り返しながら毎日を過ごしてきた。


それで限界が来たんだ。


『そんなとき、私を養子にしてくれたいまの両親が助けてくれたの。いじめにあってから人を信じられなくなったけど、傷ついた心を、時間をかけて少しずつ癒してくれた』


一度壊れた心は、元に戻らない。


茉雛ちゃんは傷を癒せたかもしれないけど、私には無理。


『いまでも過去のこと、ふとしたときに思いだすし、人と深く付き合うのも怖いって思う。誰かと仲良くなるには、本当の自分を隠してたらだめなのに、わかってても勇気が出ないの。でも……そんな私だけど、誰かが苦しんでいたら、私が経験したことと同じ目にあっている人がいるなら、なんとかして助けたいって思う』