茉雛ちゃんの必死な表情を見たら、涙がぶわっと出てきた。
『音ちゃん、話して?』
『ううっ……』
『お願い、音ちゃんの話が聞きたい。とにかく危ないから、こっちに戻ってきて』
『戻らない……。もうぜんぶが嫌になったの』
私は手に持っていたくしゃくしゃの紙を、茉雛ちゃんに向かって投げつけてしまった。
雪の上に落ちた紙を拾った彼女は、くしゃくしゃの紙をひろげる。
『なにこれ……音ちゃん、誰かにいじめられているの?』
私が黙っていると、茉雛ちゃんはその紙をくしゃくしゃに丸めて自分の制服のポケットにしまった。
『誰にいじめられたの? いつからつらい目にあってたの?』
『2年生に……なってから……』
『いま冬だよ? 2年生になってからって……そんな長いあいだつらい目にあってたの?』
『息を吸うのも苦しいの……夜も眠れない……生きててもつらいだけだから……死にたい……』
『だめだよっ!』
『簡単に言わないで』
『いままでなんのために耐えてきたの? そんなつらい思いしてまで我慢してきたのに、こんなふうに死なないでっ』


![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)
