「灰谷……あの紙が灰谷の物って、どういうことなんだ?」
伊原くんの言葉に、音ちゃんは顔を上げる。
「ぜんぶ話すから、12月24日のあの日のこと……だけどその前に、茉雛ちゃんに会わせてくれない?」
思いだした。
白石さんの病室の前に、花かごが置かれていたこと。
音ちゃんがこの病院に来ていたのは、ほかの誰かのお見舞いじゃなくて、白石さんの病室に花を届けるためだった?
「あの日から一度も茉雛ちゃんに会えてない。病室には、茉雛ちゃんの家族しか入れないって聞いて……でも、伊原くんと一緒なら入れるでしょ?」
音ちゃんは、伊原くんが白石さんの彼氏だと知っていたんだ。
いったい、いつから知っていたんだろう。
「お願い……お願いします。茉雛ちゃんに会いたい。伊原くんは、茉雛ちゃんの双子の弟なんでしょ?」
ふ、双子の弟!?
いや、音ちゃん。伊原くんは白石さんの彼氏だよ。
「灰谷は知ってたのか、俺のこと」
えぇぇぇぇーーーーー!?


![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)
