そのときまで、私たちは気づいていなかった。 ベンチに座って話している私たちのことを、誰かが見ていたことを。 その誰かが、私たちの話を聞いていたことを。 声をかけられるまで、私たちは気づかなかった。 「ぜんぶ……話すから……」 うしろから突然、聞こえた声。 伊原くんと私は、驚いて振り向く。