「え?」
「さっき、赤西さんと話したとき、事故の日のことで何か覚えていることはないか、必死に思いだしてもらったの」
――私は、赤西さんとの会話を思いだす。
『あ、そういえば……事故と関係があるかはわからないけど……』
『どんな些細なことでもいいの。教えて』
『図書室の窓から雪の上に倒れている女子生徒を見つけて、驚いたまま図書室を出て……階段を下りようとしたとき、上からドアが閉まる音が聞こえたんだよね』
『ドアが閉まる音?』
『そう。一瞬、不思議に思ったんだけど、それどころじゃなかったから、そのまま急いで下に向かったけど』
――と、赤西さんは言っていた。
図書室は3階。3階の階段から下りようとしたときに、上から聞こえたというドアの閉まる音。
階段の上にあるのは、屋上に続くドアだ。
学校の規則で、屋上は立入禁止になっていて、さらに“立入禁止”と大きな紙も屋上のドアに貼ってある。
普段は、誰も近づかないはずの屋上。
だから赤西さんは、上からドアの音が聞こえたとき一瞬、不思議に思ったんだ。


![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)
