「赤西と?」
「うん。赤西さん明日から学校に来るって……!」
「本当に? よかったな……って、風杏が泣くのな」
「だってもぉ……ごめん……。赤西さんが笑ってくれた顔、思いだしたらうれしくて……いまだってつらいはずなのに……」
伊原くんは、指で私の涙をぬぐってくれた。
「赤西さん、これからカウンセリングとか受けたりするって言ってた。赤西さんの傷が少しでも癒されるといいな……」
「そうだな」
傷は、きっと簡単に消えることはない。
悪魔のような最低な人間からうけた傷のせいで、なにもかも怖くなってしまったと思う。
人を信じることも、怖くなってしまったはず。
それでも、傷を癒してくれるのは……たぶん人なんだ。
いいひとたちに、たくさん出会ってほしい。
つらい日々を過ごした分も、これからは優しいひとたちに出会ってほしい。
私にできることがあれば、力になりたいって心から思う。


![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)
