「汐野さん、うちにたずねてきたとき、白石さんの事故が起きる数日前、白石さんと電話で何を話したのか知りたがってたよね?」


「あ、うん」


白石さんの事故が起きた、12月24日。


その数日前。


学校の廊下で、白石さんは泣きながら誰かとスマホで電話しているのを緑河くんに目撃されている。


緑河くんの話によれば、白石さんは電話を切ったあとも泣いていた。


緑河くんが泣いている理由を聞いたら、一言だけ“戦わなきゃいけない相手がいるの”と白石さんは言ったという。


「白石さんとは1年のときに同じクラスで、2年は違うクラスだったけど図書委員で一緒になった。それまで特に仲が良かったわけじゃないんだけど、学校休むようになってから、心配してよく連絡くれて……」


「そうだったんだ」


「白石さんの事故が起きる数日前も、図書委員のクリスマス会が25日にあるから、それだけでも学校に来ないかって白石さんがスマホにメッセージくれたんだ。そのとき、白石さんに電話して、不登校になった理由……黒河内にされたことを、白石さんに打ち明けてしまったの……」


赤西さんは電話で、白石さんに不登校の理由を打ち明けた。


「そしたら白石さん電話越しに泣きだしちゃって……。黒河内のこと許せない、戦うって言ってくれて……。何もしないでほしいって伝えたけど、白石さんの気持ちはうれしかった。味方がいるって思えた」


白石さんが言った“戦わなきゃいけない相手がいるの”というのは、黒河内先生のことだったんだ。


「だけど、その電話から数日後……クリスマス会の準備の日。あの12月24日、白石さんの事故があった。2年生の図書委員は、図書室で準備があるって白石さんに聞いてたから、その日も授業は休んだけど、放課後に学校へ行った」