「上がって」
「はい、おじゃまします」
この家で、一人暮らしをしている黒河内先生。
家の中はきれいに片付いていて、しんと静まりかえっていた。
「何食べたいか決まったか?」
「いえ……黒河内先生におまかせします」
「そうか。じゃあ、すぐに作るから少し待ってて」
「はい」
黒河内先生は台所に行き、私は四角い木のテーブルが置いてある和室で座って待つ。
縁側のガラス戸からは、庭と裏の雑木林が見えた。
外を見ていると、なんだか頭がボーッとしてきた。
急に眠気が……なんでだろう……。
顔を洗ってこよう。ついでにトイレにも行きたい。


![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)
