「黒河内先生の家って、どのへんなんですか?」
「ここから車で20分くらいかな。うちに着くまでに何が食べたいか考えておいて」
「はい」
私はスマホを取りだし、コーヒーを飲みながら伊原くんにメッセージを送る。
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これから黒河内先生の家に、
行くことになったよ。
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あ、スマホの充電がもうなくなる……。
伊原くんからの返信を待つあいだに、スマホの電源は切れてしまった。
車の中でコーヒーを飲み終えたころ、黒河内先生の家の前についた。
「コーヒーごちそうさまでした」
「ゴミ捨てるよ」
空になった紙コップを先生に渡すと、それをくしゃっとつぶして車の中のゴミ箱に捨てた。
私と先生は、車から降りる。
2階建ての木造家屋、家の裏には雑木林。
近所の家とは距離が離れていて、とても静かなところだ。
車の中で聞いた話では、黒河内先生がうちの学校に採用が決まったときに、空き家だったこの家を借りたらしい。


![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)
