少しだけ開いたドアから見えたのは、上下黒い服を着た赤西さんだった。
「あ、赤西さん、突然ごめんね」
赤西さんは一瞬だけ目を合わせてくれたけど、すぐにそらされてしまった。
そして、小さな声で私に言った。
「……どうして汐野さんがうちに? このまえもスーパーで追いかけてきたよね」
「あのときも驚かせてごめんなさい。じつは、赤西さんに聞きたいことがあって……このまえスーパーで偶然会ったときも、赤西さんと話がしたかったの」
「だって……汐野さんとは学校でもほとんど話したことないのに、いきなり追いかけられたらびっくりするよ」
「そうだよね、本当にごめんね」
「もういいよ」
「赤西さん……私、最近知ったんだけど、2年生の冬ごろからほとんど学校来てないんでしょ?」
「ときどきだけど……保健室に勉強しに行ってる」
赤西さんは、ずっと暗い表情でうつむきがち。目もほとんど合わせてくれない。
不登校になった理由……聞ける雰囲気じゃない。
「それで、聞きたいことって?」
「……あ、あのね、白石さんのことなんだけど……」


![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)
