「あの、黄島さんは……」 教室の入口付近でおしゃべりをしていた生徒に話しかけると、彼女を呼んでくれた。 不思議そうな顔で私のほうに近づいてくる黒髪をふたつに結んだ彼女に、私はニコッと笑いかける。 「黄島さん?」 「はい」 「突然、ごめんね。私、3年の汐野風杏です」 「あ、はい……えっと私に何か……」 「いくつか聞きたいことがあって、いま少し話せるかな?」 「はい」 私は廊下の隅に黄島さんを連れていく。