「汐野に今日うちに来てもらったのはさ、これ……」
そう言って伊原くんは、私の前に大きな紙袋を置いた。
「なぁに?」
「プレゼントっていうか、夏休みのおみやげ……かな。汐野にはホントお世話になってるから」
「うそ……ありがとう。中、見てもいい?」
「うん」
紙袋の中には、かわいらしいデザインの箱がいくつも入っていて、クッキーなどのお菓子の詰め合わせや、おしゃれな入浴剤などが入っていた。
「わぁ……こんなにたくさんもらっていいの?」
「何がいいかすげぇ悩んでさ」
「ふふっ、うれしい」
うれしかった。
プレゼントだけじゃなく、私のことを考えて悩んでくれた時間があったことも。
「こんな大雨の中、来てもらってごめんな。天気予報で今日は雨降らないって言ってたのに」
「ううん。あのね、伊原くん。今日ねここに来る途中、うれしい出来事と残念な出来事があったんだ」


![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)
