「あの、赤西さんっ」
私が赤西さんのほうへ歩きだすと、彼女はすぐさま逃げるように走りだした。
「ま、待って!」
スーパーの通路を走って、赤西さんを追いかけていく。
「話があるのっ!待ってっ!」
私は走りながら叫ぶけど、彼女はそのまま店の外に出ていってしまった。
スーパーの前は広大な敷地の駐車場。
車があちこちにとまっていて、辺りを見回しても赤西さんの姿はない。
どこかに隠れちゃった?
せっかく会えたのに、逃げられてしまった。
「走るの、速すぎだよぉ……ハァハァ……」
私は息を切らしながら、その場にしゃがみこむ。
「赤西さんに話、聞きたかったのに……」
赤西さんとは同じクラスになったことがなく、私も彼女の顔と名前を知っている程度。
赤西さんも、私のことはよく知らないだろうけど……急に話しかけたせいで驚かせてしまったのかもしれない。
赤西さん……大丈夫かな。
学校に来ないのも、なにか理由があるはず……。
だけど、どうして誰も、赤西さんが不登校になった理由を知らないんだろう。


![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)
