紫蘭ちゃんと別れたあと、私は伊原くんの家に向かって歩いていた。
夏休みが終わっても残暑は厳しく、ダラダラと汗が流れてくる。
ちょうど大きなスーパーの前を通りかかったため、アイスクリームでも買おうと私は店内に入っていく。
「はぁ……涼しい」
店内は空調が効いていて、店の外とは別世界のように涼しい。
アイスクリーム売り場に行って商品を選んでいると、ふと通路を歩いていた人物に目がとまる。
あれって……。
黒い髪は、肩につかないくらいの長さで、黒のTシャツ、紺のデニムパンツ、白いスニーカー姿の女の子。
まだ学校が終わって間もないこの時間で制服姿ではないことから、新学期の今日も学校には来ていなかったのだろう。
彼女の色白のきれいな横顔を見つめたまま、私は離れた場所から声をかけた。
「赤西さんっ」
私の声にハッと驚いた彼女は、やっぱり赤西ありさだった。


![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)
